ヒトはほとんどの時間を室内環境で過ごし、室内のバイオエアロゾルの吸引による感染症やアレルギー疾患が近年問題となってきています。これに対する解決策を見出すため、本研究では最新計測技術を駆使したバイオエアロゾル解析から新空気指標「H’OME(住環境の微生物(Home microbiOME)とヒトー微生物の相互作用総体 (HolobiOME)の意)」を構築、浮遊物質の挙動、生活行動様式から住宅設計までを統合的に把握し、新指標に基づく衛生微生物学的に安全、安心な住環境・街づくりを若手・学際・ 国際・産学共同研究チームで達成します。
H’OMEは、従来の温湿度や代表的な化学物質に加えて、病原性微生物を含む網羅的な微生物群集データを基に導くものです。日本固有の気候や伝統に基づく家屋から得られるデータを利用とする本研究は、日本発かつユニークなものです。
住環境と微生物環境の関係について本研究では、カビ、細菌やウィルスを含めた微生物群集の室内分布と伝播経路の定量的な把握、室内物理環境や人の住まい方との関係を明らかにすることを目的としています。
実施項目
- 住まい、住まい方がコントロール可能な実験住宅において、住まい方の違いによる物理環境と微生物群集の関係の解明
キッチン、リビング、寝室、浴室、トイレ等において、室内温湿度、紫外線(UV)量、多点風速計による室内気流計測と、内装材・設備機器表面に生息する微生物を調べ、微生物群集の分布・伝播に対して影響を及ぼす室内物理環境の要因を特定します。 - 既存住宅における屋外気象、住まい、住まい方の違いによる物理環境と微生物群集の関係の解明
1)と同様の解析を伝統住宅(京町家、茅葺住宅など)、と現代住宅を対象として実施します。同時に、地域、住まい、住まい方と微生物 (カビ等) 発生状況、健康状態に関するアンケート調査もします。 また、バイオエアロゾルの伝播を考慮した数値解析を熱水分性状解析、数値流体解析、換気回路網計算などの手法を用い、実測により得られた室内物理環境とバイオエアロゾル分布の測定結果の再現、室内物理環境と微生物群集との関係を取り入れた数値解析モデルを作成し、室内微生物の分布・伝播のメカニズムを示します。これらを通じて、「微生物学的に健全な空気環境状態」達成のための住まい、住まい方を提案します。